初めまして

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初めてのブログです。

テストをします。

 

 

 プロローグ

 

①  タクシー客

 

 最終電車がホームに滑り込み、改札口から沢山の人がタクシー乗場に走って来る。
 F駅をホームグラウンドにする横山タクシー運転手の桜木浩二(さくらぎこうじ)は、運転席ドア下のレバーを上げ、客室ドアを開くと同時に、上半身を後部座席に向け、「どちらまで?」と、乗り込んで来た客に訊いた。
「二丁目交差点向こうのセブン……」
 ぶっきら棒に答える。
――ちっ! また、ゴミ客かよ。
 桜木は心の中でそう毒吐いた後、アクセルを踏み込み、車をスタートさせた。
 ゴミ客とは、基本料金内の短距離客のことである。
「……ふざけんじゃねぇ……」
 その時、小声ではあるが、吐き捨てるような言葉が聞こえた。
――まさか?
 ドキリとし、桜木はバックミラーに視線を遣った。
「……ふざけんじゃねぇ……」
 再び、小声で呟く。
「お客さん、何か、お気に障ることがございましたでしょうか?」
 桜木は恐る恐る、バックミラー越しに言葉を掛けた。
 返事は返って来ない。
 二丁目の交差点に差し掛かる。桜木はゆっくりとハンドルを右に切った。
「……ふざけんじゃねぇ……」
 再び、後部座席からの言葉。
 手の中のスマホを見つめている。
 桜木はそっと、バックミラーの向きを下げた。
 見つめているのは、ネットのホームページか何かだろうか?
 赤紫色を基調とした、男と女のイラストが描かれた画面が小さく見える。
「ふざけんじゃねぇ! 馬鹿にするにもほどがある。誰だと思ってんだよ! 本来なら、おまえみたいなゲスなんて相手にさえしねぇんだ」
 どうやら、自分に向けられている言葉でないことはわかったが、桜木は言い様のない不快感を覚えた。
「このゲス野郎!」「このゲス野郎!」「このゲス野郎!」
 目はギラギラとスマホ画面を凝視し、赤茶けた唇から放たれる罵りの言葉は途切れることがない。
「このゲス野郎! 絶対に許さない! このゲス野郎! ここまでコケにされて、黙ってられるか! 許さない! このゲス野郎! 絶対! 許さない!」
 スマホを持つ手が、ブルブルと小刻みに震えている。
 やがて、前方にセブンイレブンの看板が見える。
 桜木は、ブレーキペダルに置いた右足にゆっくりと力を加え、ハザードランプを点灯させた。